心に壊れが生じてダメになる前に、ビジネスホテルにこもって何もしないをしよう

あれこれがいろいろあり、ちょいと休職している。
自分のアパートにいてもなんだか心身が休まらないので、転地療法を試みることにした。
転地療法と言えば大げさに聞こえるけど、有り体に言えば「遠くの街に逃亡し、そこのビジネスホテルに立てこもり、何もせずに過ごす」ことだったりする。
以前、同じような状況になった時、とりあえず住まっている場所から遠くの街に逃亡してビジネスホテルに何日か立てこもったところ、心身の休息にかなりの効果が認められた。
また、最近読んだ借金玉氏の著作に「心身がやられている時はビジネスホテルで外ごもりをすべし」という記述があったことも私の背中を押した。

某・いかなる季節も赤い半袖を着て下半身丸出しにした黄色い毛皮の肉食獣も映画で言っているじゃないか。僕は毎日何もしないをしているよ、と。
まぁ、毎日何もしないというわけにはいかないけれど、ビジネスホテルに立てこもって数日に渡り何もしないをすることぐらい、心身に壊れが生じている時くらい許してもらおうじゃないか。もうだめですという感じのあなたはぜひ試してほしい。本当に心身が休まるので。

もちろん、わざわざビジネスホテルになど行かず、自分の部屋で何もせずに過ごすことで何とかなるのならそれに越したことはないのだけれど、自分の部屋というものは、メンタルがアレな時には意外と心身が休まらないものだ。
例えば、心身の壊れが仕事由来のものだとしよう。その場合、部屋のなかに仕事に使うもの……例えば、資料やカバン、スーツや制服など……があれば、仕事のことを思い出して気分がダメな感じになる。
その点、ビジネスホテルはいいぞ。必要十分なスペースには心を乱すものが何もなく、誰にも休養を邪魔されない。清潔な寝具と、清潔なバスルームと、清潔なタオルがあなたを待っている。
ガラッと環境を変える最速かつ最もお手軽な手段は、ビジネスホテルごもりだと断言してしまおう。

逃亡先の選定は割と簡単で、

  1. 最低でも、知り合い≒メンタルを削ってくるような関係者が来ない場所を選ぶ
  2. 必要条件ではないが、窓から見える景色が良ければベター
  3. 飲食できる場所が近場に揃っている。そのような場所がなければ、最低でもコンビニがあるところを選ぶ
  4. これも必要条件ではないが、それなりに観光できる場所があれば尚のこと良好

といった点に気を付けて、適切な土地のビジネスホテルを選ぼう。

窓から見える景色について気を付けるべきことは、借金玉氏も著作で言及しているけれど、景色がいいからと言って、ビジネスホテルではなく、温泉旅館など選んではならない、というところ。
そりゃあ、温泉旅館でも十分にくつろぐことはできる。温泉が好きな御仁なら尚更。
ただ、夕食が終わったあたりに従業員のおじさんが布団を敷きにくるでしょう、あれがいけない。
心に壊れが生じている時は、できれば放置してもらったほうがありがたい。他人に気を使わなくても済む環境としては、ビジネスホテルに勝るものはないだろう。

普通のビジネスホテルなら、飲食できる場所が近くにない……ということはあるまい。
何日か滞在することになる時は、毎日違うものが食べられると気分転換になる。
飲食店の従業員氏に対してなんとなく気を使ってしまいそうなら、別にコンビニ飯でもいいだろう。最近のコンビニ飯はあなどれない。ものによっては、そこらへんの中途半端な食堂より美味い場合だってあるし。
ホテルによっては、レストランを併設しているところも多い。ここで食事を済ませてしまうのも手だ。朝食に関しては、鉄板のバイキングで決まり。
それにしても、朝食バイキングって、何であんなに食べてしまうんだろう。謎。

ビジネスホテルの部屋で過ごすことに飽きてきたら、または部屋の清掃時間になったら、近場を散歩してみるといい。観光ができる場所があれば良さが加算される。
逃亡先の街に観光する場所があったほうがいい理由は、動き回れるまで回復した時に見て回るところがあれば更に気分の回復につながるから。まぁ、観光できる場所がなくても特に支障はない。

さて、逃亡先のビジネスホテルでの過ごし方だが、まずはとにかく「何もしないをする」ことだ。
あなたは何もする必要はない。とりあえず食って寝ること。余計なことは一切考えない。メンタルのアレさが顕著な時は、あちこち動き回らずにじっとすることが回復の近道だ。何もしないをするための環境で、使命感を持って何もしないをしよう。そのためにわざわざビジネスホテルを確保するのだから。
きちんとベッドメイキングされた清潔なベッドで、ひたすら眠ってもいい。
眠れないなら、カーテンを開けてぼんやりと外を眺めるだけでもいい。
ただひたすら天井を見つめ続け、第弐話の碇シンジごっこをしてもいい。

何もしないをする上で問題となるのが、部屋の清掃時間だ。
だいたいのビジネスホテルには、ドアのところに「清掃不要」の札があって、連泊の際にこれを外に掛けておくと誰にも邪魔されずにぼんやりしつづけることができる。ホテルによっては、シーツやタオル一式をドアのところにぶら下げておいてくれるから、誰にも会うことなく部屋に居続けることも可能だ。心身が疲れ果ててどうしようもない時は、この作戦を用いるといいだろう。
私の場合、連泊でもチェックアウト時間に退出し、シーツやタオルの交換、部屋や風呂場の掃除をお願いしていた。プロに清掃やベッドメイキングをやってもらったほうが部屋の居住性が増し、断然居心地がよくなる。メンタルが最悪の状況を脱して多少動けるようになったら、こちらの作戦を用いるといいだろう。
尚、チェックアウト時間からチェックイン時間までの過ごし方だが、外に出て食事をしてきたり、観光名所を見に行ってきたりするのもいいし、ホテルのロビーなりラウンジなりでぼんやりしてもいい。または、たまった洗濯物をホテル併設のコインランドリーでやっつけつつ、動画なり音楽なりを摂取して時間が過ぎ去るのを待つのもいい。

ホテルの部屋で何日か何もしないをし続けたあなたは、やがて動けるくらいの気力を取り戻すだろう。
まぁ、動ける程度にも段階があるので、無理は禁物。とりあえず動けるようになったなら、ホテルの近所を散歩してみたり、食事時ならば近場の飲食店に入ってみたりと、あまり疲れそうもない程度の外出に留めておくといいだろう。
ホテルの部屋に居続けるのも退屈だ……と考えられるようになればしめたもの。あなたの心身が回復してきている証だ。もし気が向いたら、ホテルから少し足を伸ばしてみてはいかがだろうか。
ホテルから少し歩いたところの史跡を見学してみたり、雰囲気のいい雑貨屋に入ってみたり、カフェでコーヒーを楽しんでみたり、車で行ける距離の日帰り温泉まで足を伸ばしてみたり。
そんなことをしているうちに、ずいぶんと心と身体が軽くなるはずだ。

そういうわけで、心身の癒やしにも、ただの気分転換にも、ビジネスホテルごもりを心からおすすめしたい。

尚、かくいう私は岩手県盛岡市でビジネスホテルごもりをしてきた。

もとより盛岡は好きな街だったし、以前メンタルがアレになった時にも盛岡は逃亡先となり、その際に大きな効果があったことから、今回も同様の効果を期待した……というわけだ。

盛岡はいいぞ。ビジネスホテルごもりに必要な全ての要素が揃っている。
県庁所在地だからたいていのものは手に入るし、飲食店も充実している。
茶店文化が発達しているから、あちこちで美味いコーヒーが飲める。
昔の町並みが残っているから、見て回っても楽しい。
郊外に行けば、あちこちに温泉が湧いている。
何より、岩手の人は優しい。

盛岡には二泊三日の予定で滞在するスケジュールを組んでいた。
正直、現地に向かっていた時はかなり体調が悪く、「これは家でおとなしく寝ていたほうがよかったかも」と思ったが、ホテルに到着してすぐに何もしないを始めたところ、夜にはだいぶ回復し、十分に動けるようになった。

さて、翌日。現地に住む友人夫妻にアテンドしてもらい、緩めなスケジュールで盛岡を巡った。

展望台に登って盛岡市街を眺めてみたり、南部鉄器の製造工程を覗いてみたり、インディペンデントな個人書店に寄ってみたり、美味い蕎麦を食べたり。
二日目の夜。盛岡に癒やされ、どうしても帰りたくなくなった私は、三泊目の宿を確保したのだった。

明けて三日目。この日はとにかく行きたいところに行き、やってみたいことをやり倒した。

開館直後の県立美術館で心ゆくまで展示を楽しんだり、雪をいただく岩手山を撮影したり、カフェのはしごをしたり。もちろん、宿でぐだぐだすることも忘れなかった。

以上、二泊三日改め三泊四日の盛岡滞在を心ゆくまで楽しんだ。
おかげさまで、だいぶ心身が回復した。
本当にダメになる前に盛岡まで逃亡してきたので、回復が早かったのだと思う。

ビジネスホテルごもりだけで終わらせるのはもったいない、それが盛岡。
今後再びあれこれがいろいろあった時には、またお世話になる予定だったりする。